更新日 : 2023年02月24日
お稲荷さんはキツネを対象とした民間信仰です。食物をつかさどり、稲の豊作の神様として、全国各地にみられるものですが、田無市内にもあちこちにたくさん残っています。
ふつうは旧家の庭先や道路ぞいに祭られていますが、家の中で大切にされている珍しいものがあります。植島好春さん(向台町6の3の10、造園業)のお家です。
玄関をあけるとタタキに続いて三畳間、その正面に神棚があります。その右側は大神宮、つまりふつうの神様で、左半分にお稲荷さんが祀られています。これが「夜鳴き稲荷」として昔から植島家で信仰されてきたものです。家の改築前は居間にあったとかで、いろりのススで黒ずんでいますが、可愛らしい稲荷明神が二つ確かに祀られています。
昔、ご先祖が、あるとき、どこの家でも庭に置いているのだからと、このお稲荷さんを外に移したといいます。その夜から、どこからともなく泣き声が聞こえてくるようになりました。おかしいなと思っていろいろ調べてもよくわかりません。近くのお寺(持宝院)のお坊さんに祈祷してもらったところ、外に移されたお稲荷さんが家に帰りたがっているのだという仏様のお告げです。
そこで、元通りお稲荷さんを居間に移したら、それからピタリと泣き声がやむようになりました。いつかそのことが知れ渡り、小平市の鈴木町あたりからも、夜泣きのひどい赤ん坊を連れた若い母親たちが、次々とこのお稲荷さんにお参りに来たこともあります。
さて「どこからともなく泣き声が」というこの話、好春さんの奥さんからお聞きしたものですが、明治生まれのおばあちゃんの話では「家にいた赤ん坊の夜泣きが止まらなくなり困った」となります。昔話は時代とともに変わっていくものですが、お嫁さんとおばあさんの一代だけでもこれだけ違ってしまうという点でも興味深いことでした。おばあさんのお話では、「好春が赤ん坊のときにも、のぼりを立てて、お祈りしたことがある」とのことです。
(植島シン、好春、末子の各氏から採話)
たまろくめぐり
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