更新日 : 2023年02月24日
大根といえば、こんな話もあるんだよ。
昔、この辺りには亥の子(いのこ)さまという大きなイノシシがいたんだって。亥の子さまには9匹の子どもがいて、やんちゃで暴れん坊だったの。畑にやってきては、作物の芽を踏みつぶしたり、大根や芋をかじってしまったり、それはそれは大変だったんだよ。
この辺りはみんな、農家だったからね。作物を荒らされて、困ってしまって、とうとうみんなで相談したんだって。いつもこんなに畑を荒らされたら、仕事をする気にもなれない、どうしたらいいものかって。
それで、ぼたもちをこさえて、亥の子さまに畑で悪さをしないように、お願いに行くことにしたんだって。どうか、このぼたもちを食べて、大事な畑を荒らさないでくださいって。亥の子さまに願いは通じてね、それからは作物が荒らされることはなくなったの。
それで、毎年11月9日になると、ぼたもちを作るようになったんだよ。亥の子さまの子どもは9匹だから、九つの大きなぼたもちを作って、重箱に詰めるの。それを畑に持っていくんだよ。うちでは、そのぼたもちを畑に置いてきたんだけど、そのまま持って帰る家もあるんだよ。
知り合いの家では、ぼたもちを大根畑に持っていって、畑の周りをぐるっと回るそうだよ。そうすると大根がぼたもちを見たくて、ぐいっと首を伸ばすんだって。大根がぐんと大きくなって土から持ち上がるんで、抜きやすくなるってことだね。
ほかにもほかにも、ぼたもちをみんなで食べている音を聞かせると、それを食べたくて、首を伸ばすっていう家もあるよ。そのときにね、「米かえ?粟(あわ)かえ?」って、大声で聞くんだって。「米だよ」って答えると、大根が首を伸ばすんだって。だけど、粟で作ったぼたもちだと、大根が首を引っ込めちゃうんだって。それで、この日を「大根の年取り」って言ったんだよ。
(協力)小平民話の会
たまろくめぐり
PDF・Word・Excelなどのファイルを閲覧するには、ソフトウェアが必要な場合があります。詳細は「ファイルの閲覧方法」を確認してください。